つのだじろうの恐くないマンガ


 つのだじろうは、一般的には心霊漫画家として知られているようだが、それ以外の多くの分野での「よい仕事」が忘れてしまわれては困る。
 『ブラック団』、『忍者あわて丸』(「花のピュンピュン丸」の原作といえば通りがいいか)などのギャグもの、『ルミちゃん教室』、『泣くな十円!』などのペーソスあふれる作品群は、いずれも20年以上再刊されていない。藤子不二雄Aの最近作『愛…知りそめし頃に…』(名作『まんが道』の続編だ)にも、出てくるが、昭和30年代前半からの仕事、特に『ルミちゃん教室』などは、児童漫画の最高水準を示す作品だろうと思う。「恐くない」つのだじろうの再評価を望む。

『ブラック団』

 可藤骨蔵(通称カポネ)・タロー・ジローのまぬけなギャング「ブラック団」がまきおこすまぬけな事件を、ヒゲトラ刑事が追いつめる!
 昭和39年から少年サンデーに連載され人気を博したこの作品は、過去2回刊行されているが、読むなら収録作品の多い全5巻の双葉社版。ソノラマ版は東大購買部で売り上げ一位だったこともあるらしい。つのだのギャグ漫画の代表作の一つ。



『ブラック団 1』朝日ソノラマ サンコミックス16 S42-9-25
『ブラック団 2』朝日ソノラマ サンコミックス24 S43-1-20

『ブラック団 1』双葉社 パワァコミックス 98  S52-9-10
『ブラック団 2』双葉社 パワァコミックス 101  S52-10-10
『ブラック団 3』双葉社 パワァコミックス 105  S52-11-10
『ブラック団 4』双葉社 パワァコミックス 109  S52-12-10
『ブラック団 5』双葉社 パワァコミックス 113  S53-1-10

『泣くな!十円』



 勉強もできない、スポーツもできない、みんなにバカにされてる少年、聖徳十円がいかに生きるべきかを模索する名作。類似の、似て非なる作品(例えばジョージ秋山『花のよたろう』)といっしょになぞして欲しくない。少年チャンピオンに連載(S46-48)中は読者の反応もよく、アンケート上位常連だったが、途中で描いた読み切り『亡霊学級』が異常人気だったため、急遽『恐怖新聞』の連載が決定し、かわいそうに『泣くな!十円』は弾き飛ばされてしまった。つのだのペーソス・ギャグの棹尾を飾る作品。十円の妹、聖徳太子(たいこ)ちゃんがかわいい。秋田書店から刊行されたっきり、一度も再刊されていない幻の名作。1巻はカバーなしで悲しいっす。

『泣くな!十円 1』秋田書店 チャンピオンコミックス S47-8-10
『泣くな!十円 2』秋田書店 チャンピオンコミックス S47-8-25


『忍者あわて丸』

あわて丸、ちび丸にさゆりちゃん、ケメ子ももちろん出てくるギャグマンガ傑作。もちろんアニメも傑作!さらに主題歌が大傑作(財津一郎万歳)。ソノシートも結構レアです(キビシィーッ)。週刊少年キング連載(S40-43)。

読むだけなら、収録話数の断然多いPCだけど、やっぱり虫コミでもほしいよなぁ。

『忍者あわて丸 1』虫プロ商事 虫コミックス もっておらず。残念。
『忍者あわて丸 2』虫プロ商事 虫コミックス45 S44-5-30
『忍者あわて丸 1』双葉社 パワァコミックス119 S53-3-6
『忍者あわて丸 2』双葉社 パワァコミックス123 S53-4-5
『忍者あわて丸 3』双葉社 パワァコミックス127 S53-5-5
『忍者あわて丸 4』双葉社 パワァコミックス130 S53-6-5
『忍者あわて丸 5』双葉社 パワァコミックス135 S53-7-5
『忍者あわて丸 6』双葉社 パワァコミックス137 S53-8-5


『ルミちゃん教室』

S33-38「りぼん」連載。その後掲載紙を「なかよし」「小学四年生」「小学館ブック」「りぼん」と変え、長期にわたる連載となった。つのだじろうの一番いいところが一番いい形で出ていると思う。新書版では2回刊行されているものの、いずれも入手は困難な部類だろう。なぜこの作品が新刊で読めないのか、理解に苦しむ。どこかで完全版を出していただけないものか。

『ルミちゃん教室』朝日ソノラマ サンコミックス76 S43-9-26
『ルミちゃん教室』虫プロ商事 虫コミックス もっておらず。でも後版だからいいか。


『ばら色の海』

S36「なかよし」連載。単行本の表紙はナンですが、中味はまあ大丈夫です。第2回講談社児童まんが賞受賞。でもつのだ本人はあまり気に入ってないらしい。私もあまり気に入ってない(関係ないか)。2回刊行されているも、PC版では短編「ねえちゃんのうた」がカットされているので、買うならサンコミ版をどうぞ。
『ばら色の海』朝日ソノラマ サンコミックス80 S43-10-21
『ばら色の海』双葉社 パワァコミックス148 S53-11-5


『あかね雲のうた』

講談社まんが賞をとって肩に力が入ったか、受賞後の作品のいくつかはやや精彩を欠いていた。が、このS38年「りぼん」付録・前後編『あかね雲のうた』で完全復活。

『あかね雲のうた』虫プロ商事 虫コミックス29 S44-1-30


『怪虫カブトン』『グリグリ』

 『怪虫カブトン』:カブトンとグリグリがしかけるイタズラの数々。S41週刊少年サンデー連載。過去2回刊行されているが、パワコミ版では、ページ数の関係で2話カットされているので、これは是非ともサンコミ版を買わねばなりません。

『グリグリ』:「カブトン」から独立した主人公グリグリが気弱なイタズラをする趣向。スター・システム(ってのかな?つまり主人公を役者に見立てて、いろいろな役をさせるシステム。手塚も大方そうですね。)のギャグ作品はこれが初めてだ(つのだいわく)っていうけどそうかなぁ。
しかしハマグリが主人公のマンガってのも...なかなかないよ。S42週刊少年サンデー連載。

『怪虫カブトン』朝日ソノラマ サンコミックス86 S43-11-25
『グリグリ』朝日ソノラマ サンコミックス95 S44-1-16
『怪虫カブトン』双葉社 パワァコミックス155 S54-1-5


『おれの太陽』 『サムライの子』 『スーパー万兵衛』 『戦車城攻撃隊』
    
他にもいろいろあります。

『おれの太陽』S40-41週刊少年サンデー連載。競馬ものっていうのも、この作品あたりが(馬だけに)走りじゃないでしょうか。

『サムライの子』原作/山中恒。S37「なかよし」。とりあえずノーコメントです。

時代物も結構書いてるんですよ。『スーパー』はギャグ・『戦車城』はまじめ。私はそれほど興味はないですが。

『おれの太陽』朝日ソノラマ サンコミックス22 S42-12-20
『サムライの子』虫プロ商事 虫コミックス73 S44-12-30
『スーパー万兵衛』双葉社 パワァコミックス92 S52-7-10
『戦車城攻撃隊』双葉社 パワァコミックス116 S53-2-10


『その他くん』

つのだ版『まんが道』ともいえる作品。落ちこぼれ主人公の君輪園太(きみはその他)くんが高校進学を蹴飛ばし(と言うより単に出来なかった)、一念発起で漫画家をめざす。

『その他くん 1』講談社 KCM-412 S51-10-30
『その他くん 2』講談社 KCM-413 S51-10-30
『その他くん 3』講談社 KCM-420 S51-12-20
『その他くん 4』講談社 KCM-430 S52- 2-28


『なんでもやってやろう』

つのだの(多分)唯一の自伝的著作。『呪凶介』までの情報は、これでほぼ網羅できるだろう。

『なんでもやってやろう』広済堂 「ぼくのつくった漫画の本シリーズ2」 S52-4-10



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